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放射線治療を受けるにあたって〜その副作用と注意事項〜

(1)リニアックによる放射線治療

 (1.1)放射線治療の特徴

①手術と放射線治療は局所療法です。化学療法は全身に薬がまわり、がん細胞をやっつける全身療法です。手術は局所的に切り取り、放射線治療は照射した部分のがん細胞をやっつけます。

②手術では臓器を切り取ってしまうので、例えば舌ガンでは舌のがんの部分を切り取ってしまい、無くなります。放射線治療では臓器の機能と形態が温存されるので、舌は残ったままでがんを無くす事が出来ます。

③副作用は、照射野内に限定されるので、治療計画時に副作用を充分検討できます。ただし、放射線宿酔といって照射後にからだがだるくなり、疲れやすくなることもあります。

④手術に比べて、照射の技術が普遍化されやすいという特徴があります。放射線治は、物理学や工学を利用してがんをやっつける方法です、術者の手技の難しい部分は、機械やコンピュータの力を利用して、高度な治療が可能です。

⑤放射線治療は、正常組織と腫瘍組織の放射線感受性の差を利用した治療法です。正常組織も腫瘍組織も放射線によってダメージを受けますが、腫瘍はダメージが大きいのが普通です。また、正常組織は、回復力があるので治療が終わるころには正常組織が復活しはじめます。

⑥ただし、正常組織にも耐容線量があり、同一部位への再照射は困難なことが多いので、同じ部位の照射は検討が必要です。以前に放射線治療を受けて、今回他病院で

放射線治療を受けるときには、必ず前の病院での治療の詳細を文書で書いてもらってください。

ここで、耐容線量とは何のことでしょうか?

 耐容線量とは、正常な組織に対して放射線照射を行った場合、組織が耐えられる放射線の最大量のことです。

同じ照射線量であっても、照射体積が大きい場合は照射体積が小さい場合よりも耐容線量は低下します。

耐容線量は臓器によって異なり、臓器に障害を与えない範囲で照射する必要があります。

(1.2)放射線治療の最近十年の進歩

①コンピュータが発達し、CTが容易に使えるようになり、放射線量の物理的な集中が出来るようになりました。

②この結果、投与線量をできるだけ「がん病巣」に集中して正常組織への線量を少なくすることが、出来るようになりました。

(1.3)放射線治療の概念、分割照射

 放射線治療は、20回〜35回(4〜7週間)に分割して照射します

皮膚・粘膜・骨髄などは、絶えず分裂を繰り返しているので、放射線感受性が高く、急性期反応があります。しかし、正常組織は、再増殖して回復します。

一方、がん組織は分裂を繰り返しているので放射線感受性が高いですが、がん細胞は再生できません。

 こういった、正常組織とがんの回復の差を利用して、治癒するのが放射線治療です。

(1.4)放射線治療チームのメンバー

・放射線腫瘍医

・放射線治療技師

・放射線治療看護師

・放射線治療品質管理士

・医学物理士

以上のように、チーム医療で1人の患者さんを治療します。

(1.5)放射線治療中に気をつけること

①十分な休養をとる

②バランスの取れた栄養のある食事をとる

③放射線が照射される皮膚には、特に注意する

④治療部位の皮膚につけてはいけないもの

化粧水、香水、におい消し、おしろい

熱いものや、冷たいものを直に皮膚に当てない

⑤サプリメントを使うときは、治療スタッフに相談する

(1.6) 診察から初回の治療まで

•放射線腫瘍医が診察をします。治療の適応を判断し、処方線量の決定をします。

•放射線技師が、治療計画用のCTを撮ります。この写真から治療計画を立てます。今後30回ほど同じ体位で治療をしますので、痛い場所・不愉快なことがあれば遠慮なく担当技師に申し出てください。がまんするよりうまく治療したいのは、患者さんも放射線技師も同じ思いです。

•腫瘍部位を同定し、転移したリンパ節があれば輪郭を囲みます。治療目的を果たすよう、コンピュータ上で患者さんごとに1つ1つ治療計画を立てます。

•コンピュータで立てた計画を、実際に患者さんに適応します。照射野の決定・確認をし、今後30回ほどの治療がうまく完遂できるようにいろいろ工夫して、マークをつけます。

•コンピュータで立てた治療計画と治療台に乗って撮影した画像とを比較し正しいことを確認して、初回の治療を行います。

 初回の治療は、何も印のないところから照射すべきポイントを確定し、照射野中心を体表にマークします。(両脇と上面)この印を元に今後治療を続けますので、印が消えないよう注意してください。

(1.7)毎日の放射線治療

•患者さんを治療台に寝てもらい、体のマークをレザーポインタに会わせます。

•治療位置のチェックをし、治療計画の位置や今までの治療と今日の位置あわせを確認します。

すべてが正しくセットされれば、毎日の治療を1回、行います。

1週に一度、放射線治療医の診察がありますので、治療中の体の変化や質問したい点を聞いてください。

体のマーク位置の確認と、照射部位の確認のため1週1度程度、写真を撮って確認します。特に治療を始めて1週間以内は、患者さんが治療に慣れて来るにしたがって治療計画位置と体の印が合わなくなることもあります。このときはX線写真撮影やリニアックを使ったCT等で印の調整をすることもあります。

(2)放射線治療の副作用 、急性期障害と晩期障害について

がん細胞は放射線でやっつけて全部なくなることを目指すのですが、放射線は正常組織にも照射される部分があり、反応を起こします。これらを、急性期障害と晩期障害、そして「リスク臓器」に分けて説明します。

 急性期の反応は、放射線治療中から発症します。主として皮膚や、粘膜の細胞がダメージを受けて障害となります。しかし、正常細胞はすべてダメージを受けるわけではなく、生き残った細胞が再増殖することにより、障害は修復されます。

 晩期障害は、照射開始後6〜12ヶ月後に生じます。これらの反応は、不愉快なものが多いので、なるべく障害が発生しないように治療してゆきます。特にリスク臓器に障害が発生しないように、治療計画を立て実施します。「リスク臓器」という考え方は後で説明します。

(2.1)急性期障害

 急性期の障害は、照射される部位だけに起ります。頭に照射していなければ、髪が抜けることはありません。放射線治療開始後、2週〜3週目までに始まります。放射線治療終了後も数週間続くことがあるので、治療が終わっても注意が必要です。

 急性期の障害は、適切なケアでうまく乗り越えることが大切です。治療終了後は消失します。

放射線腫瘍医や放射線治療看護師が、最善のアドバイスやケアをします

(2.1.1)急性期障害 、 粘膜炎

 粘膜が障害を受けると下記のような症状が現れます。すべてが一時に発生するのではなく「これらの可能性があります」という意味です。同じように照射しても、症状が発生する人もいれば、発生しない人もいます。

・口腔・咽頭の粘膜炎 → 口・のどの痛み

・喉頭 → 嗄声(させい)声のかすれ

・気管 → せき

・食道 → 飲み込んだ時の痛み

・小腸 → 下痢

・尿道・膀胱 → 頻尿、排尿時痛

(2.1.2)急性期障害 、皮膚炎

 前立腺のように、体の深い部位を治療する時には皮膚炎はほとんど発生しません。乳房のように、皮膚近くまで治療しなければならないときには、皮膚炎がおこります。

 症状は、照射野の部分が「赤く」なり、痛みが生じることもあります。

 対策としては、①皮膚の清潔を保つ ②保湿をする ③摩擦しないよう保護する 等です。放射線治療認定看護師は、この分野のプロです。早めに相談して、うまく乗り切ってください。

(2.2)晩期障害

 照射終了後、3ヶ月以降のもので、潜伏期が数年を越えるものがあります。

晩期障害が起らないように、治療計画を立てます。放射線治療は長い歴史があり、正常組織の耐容線量(これ以上被曝すると障害が発生する線量)がわかっています。線量分布や線量体積分布(DVH、後で詳しく説明します)を利用した治療計画をたてることにより晩期障害が発生しないよう工夫します。コンピュータの進歩で精密な計算ができ予測が可能になりました。

(2.2.1)リスク臓器とは

 がん病巣のターゲットの内部または近傍に存在する、放射線感受性の高い臓器のことです。

 リスク臓器の耐容線量を越えて照射すると、放射線障害が発生し、QOL(生活の質)が低下することがわかっています。したがって、これらを避ける計画が大切です。

考慮する主な臓器は、以下のようなものです。

 水晶体、視神経、脊髄、肺、肝臓、消化管、直腸

(3)がんの放射線治療と副作用について

(3.1)喉頭がん(声門部がん)

 手術に比べて、放射線治療は、発声機能の温存ができる利点があります。

 特に、早期ガン(T1N0M0)では、声体に限局しているので放射線治療のよい適応になります。

 治療時には、シェルで、頭頸部を固定し、照射の印はシェルに描きますので首の辺りの見える場所には印をつけません。4MV-X線などの低いエネルギーのX線で治療します。5×5cm程度と小さい照射野で治療します。

(3.1.2)喉頭がんの副作用、急性期障害

・嗄声(させい、かすれ声、しわがれ声)

・下咽頭の粘膜炎(嚥下障害)

・皮膚の発赤

(3.1.3)喉頭がんの副作用、リスク臓器

・脊髄  

・肺

(3.2)乳がん

温存手術後の乳房内に存在する、顕微鏡的な残存腫瘍を根絶することを目的とする治療です。

手術後の病理診断で、断端陽性の患者さんは、全乳房照射後ブースト照射をすることもあります。

全乳房照射は、4〜6MV-X線、ブースト照射は6〜12MeV電子線で治療します。

乳がんの線量分割は、1回2Gyで5週間(25回)、合計50Gyが一般的な治療法です。最近高齢者の治療では1回2.66Gyで16回、合計42.5Gyが、行われるようになってきました。(JCOG0906「乳房温存療法の術後照射における短期全乳房照射法の安全性に関する多施設共同研究が進行中)

ブースト照射は、1回2Gyで5回、合計10Gy程度が標準です。

(3.2.2)乳がん治療の副作用、急性期障害

・放射性皮膚炎——紅斑

・全身倦怠感

放射線皮膚炎のケアはとても大切です。

放射線療法認定看護師が適切なケアをします。

治療が始まって2週(6回目以降)〜3週(15回目)に出現し、治療が終わっても、数週間持続します。

・皮膚の清潔

・皮膚の保湿

・摩擦からの保護等、具体的なアドバイスを看護師から受けてください。

(3.2.3)乳がん治療の副作用、リスク臓器

肺 、 心臓(心膜炎)

(3.3)前立腺がん

 手術と比較して放射線治療の利点は、男性機能・尿道系機能が温存されるのでQOLが高いといわれています。

 最近では、3次元原体照射、強度変調放射線治療(IMRT)など高精度放射線治療が用いられています。

(3.3.2)前立腺がんの副作用、急性期障害

・腸管粘膜炎の症状である、下痢・肛門部違和感・出血。

・膀胱尿道炎の症状である排尿障害・頻尿・残尿感。

(3.3.3)前立腺がんの副作用、慢性期障害

・放射線直腸炎・放射線膀胱炎・尿道狭窄・勃起障害

(3.3.4)前立腺がんの副作用、リスク臓器

・直腸(直腸からの出血がないように治療する)

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